竣工 | : | 2009年 |
用途 | : | 週末住宅 |
主要構造 | : | 木造 |
規模 | : | 地上2階 |
面積 | : | 敷地面積 2494.90m² 建築面積 47.80m² 延床面積 94.23m² |
敷地条件 | : | 第1種低層住居専用地域 |
家族構成 | : | 夫婦+子供 |
構造設計 | : | 空間工学研究所 |
設備設計 | : | ymo |
担当 | : | 北田修治 |
掲載雑誌 | : | GA HOUSES No.111 新建築・住宅特集2010年2月号 |
敷地は南西下がりの谷状の森で、四季それぞれの美しい風景を臨めるばかりでなく、光や風や音が時間と共にゆったりと移ろっていく様を感じられる素晴らしい場所で、茜色に空を染める劇的な日没も眺められる。施主は大学で数学と物理学を研究しているご夫妻で、二人それぞれの書斎と東京であふれかえった本を収納する場所を特に求められた。
プライバシーを必要とする諸室を下階に、上階には広間を中心にしてオープンな諸室をその周りに配するという、至って単純な全体構成になっている。上階の壁面いっぱいにとられた本棚は、夫妻の「脳の断面」である。
この住宅の中心となる広間を森のステージに見立て、十分な手応えを持った外の風景をそこに積極的に重ね合わせる。その時、敷地周辺の樹木間の距離とか梢の高さとかいった寸法を室内に移して、内と外との境界が揺らぎ曖昧になる。それらが一体となったような、襞に富んだより大きな全体を獲得することが、この住宅のコンセプトである。
外の風景が季節によってその様相を変えていくように、内部の風景もその時の気分や機能的な要求、そして何よりも季節の環境条件に合わせて変えられるよう、室内の空間ヴォリュームを伸縮させて空気環境を調整できるようにしちる。
広間の天井は樹木を見上げた時のカタチを写し取って抽象化したものだ。数学者のご主人は音楽好きでもあって、結果として、この多面体の天井は音響反射板の役割を担うことにもなった。音響機器から流れる人工的な音だけではなくて、鳥の鳴き声や梢の擦れる音など、自然の音までをも森に向けて響かせてくれたらと思った。