亀有の住宅



竣工:2005年
所在地:東京都葛飾区
用途:専用住宅
構造:鉄骨造
規模:地上2階
面積:敷地面積 1102.0²
延床面積 344.3m²
敷地条件:第1種住居地域
家族構成:夫婦+子供3人
構造設計:空間工学研究所
設備設計:ymo
担当:小川リエ
掲載雑誌:GA Japan No.85

敷地はかなり広いのだが、東京に流れ込む主要鉄道の駅に近いということもあってそのほとんどを有料駐車場として運用することがはじめから決められていた。
だから順序として、少しでも多くの車が駐車できるよう車のためのスペースをまず先行的に決め住居は車の駐車にとってあまり有効ではない、南に出張った部分につくることになった。クライアントが経営する会社のゲストハウスを兼ねるこの住宅は、したがってその正面を必然的に、不特定多数の人と車が24時間出入りする北側の駐車場側に向けることになる。
一方、南と東は隣接するお寺の墓地に面していて、高層マンションも混在する雑然とした東京の密集地にあって、時間とともに推移する太陽光と通風、それにここからの南の空への眺めは、若干の問題を除けば申し分のないものだったと思う。
計画の趣旨は、この土地が本来的にもっているはずの良質な場所の特性を引き出し、それと十分に応答する全体空間を構成することにある。
その手立てとして、建築は駐車場側とはいったん切断し、その上で内と外との関係を互いに否定的でありながらも互いに依存しあうといった相互内属的な関係に、空間的に持ち込むことが狙われた。この建築を構成している基本的なアイデアはいわゆる「跨ぎ越し」というもので、与条件は多岐にわたりかなり重いものだったのだが配列を含めてどうにも動かすことができない諸室を一群にまとめ、それを取り巻くように、またその頭越しに先の狙いを全体にわたって可能にする。建築の核となるような自立した空間を仕掛けようというものである。
その空間が先の関係を関係そのままに捉えようとした2階の広間で、ここは内でもなく外でもなく、また逆に内でもあり外でもあるような内と外とが交差する、あいだの空間である。各室は基本的に外との直接的な関係をもつのだが、このあいだの空間を通して、内と外あるいは実と虚といった関係が交差・転換し、その繰り返しを人の動きに合わせて促すことで、計画の趣旨を体現する全体を獲得しようとした。