I計画



I町はT県の県南地域に位置する人口約20,000人の町で、T市・O市など2市8町とともに「T・O定住圏」を形成している。計画地は、I町のほぼ中央に位置している22haの南北に細長いやや南下がりの平坦地である。中央を農業用水路が縦断し、東西を低い山に囲まれた敷地からは、南方にI町民が深く愛する三毳山(みかもやま)を遠望することができる。本計画は、建設省が押し進める「福祉施設と一体となった公園整備の推進」計画に沿った、I町総合運動公園計画の一環であり、建築施設は以下のものから構成された、総延床面積18,600m²の複合体である。

体育系施設(10,400m²)
■体育館
・メインアリーナ/国際級バスケットボールコート2面、観客席500席
・サブアリーナ/国際級バスケットボールコート1面、観覧ギャラリー
・トレーニングルーム/3室
・武道場/柔道場2面、剣道場2面、観覧ギャラリー
・弓道場/近的(矢通し28m²)6座
・温水プール/8レーン50
・競泳プール、子供用プール
・温浴施設/温泉、スパなど

■福祉系施設(6,500m²)
・地域福祉センターA型(老人デイサービスB・E型及び身障者デイサービスセンターを含む)
・小型児童館
・社会福祉協議会
・シルバー人材センター
・老人福祉センター
・保健センター

■共用施設(1,700m²)
・インフォメーションセンター
・レストラン、カフェ
・アトリエ

計画の趣旨は、機能分化が行き過ぎてバラバラになり結果的に時代の要請に耐えられなくなってきた既成制度内の施設の在り方を見直そうというものである。そのために、一端すべての諸機能を一体化させ、その後に整理し直すという方法を採った。この過程で、体育系施設の諸室間及び福祉系施設の諸室間ばかりでなく、体育系施設と福祉系施設とを歩行動線で連続させ、全施設を車椅子でも一巡できるプロムナードを計画した。福祉施設に来た老人や身障者が所用の後にプロムナードを散策しながら運動する若者と出会ったり、逆に運動しに来た若者が車椅子や杖を使ってリハビリに励む老人立ちを見たりすることで、子供から老人・身障者まで多様な人たちが集まって一体となった環境を創出し、それが日常風景になって溶け込んでいってくれることを期待した。