竣工 | : | 2004年 |
所在地 | : | 東京都世田谷区 |
用途 | : | 専用住宅 |
構造 | : | 鉄筋コンクリート造+鉄骨造 |
規模 | : | 地上2階地下1階 |
面積 | : | 敷地面積 181.02² 延床面積 219.80m² |
敷地条件 | : | 第1種低層住居専用地域 |
家族構成 | : | 夫婦+子供2人 |
構造設計 | : | 空間工学研究所 |
プロデュース | : | ベースメント |
担当 | : | 重井真弓 |
掲載雑誌 | : | GA Houses No.82 |
どこからも見られたくないし、どこも見たくない」というのが、クライアントの強い要望だった。とはいってもこれは、外の世界から隔絶された小宇宙が欲しいというのではなくて、密集した家屋が建ち並ぶ周辺の眺めを見たくないし、そこから見られたくない、という意味である。一方、敷地に十分な大きさがあるわけではなく、与条件を組み込むと3層は絶対に必要になる。予算的に地階をつくることはできないし、北側からの法的規制はかなり厳しいから、最上階はどうしても南に寄らざるを得ない。
上のような状況で僕たちが空間構成の手立てとした基本的なアイデアは、「外側の郭(くるわ)と内側の郭(くるわ)」というものである。外側の郭はRC打放しの外壁として、この建築を敷地のかたちなりに単純な矩形で囲んでいる。内側の郭は変転の末、最後は家具のブースとなって2階に置かれた。外郭・内郭といっても計画の狙いはむしろはその〈あいだ〉にあって、そこから光や風や空といったこの敷地が本来的にもっているだろう素のままの風景を導こうというわけである。東西に取られた外部空間や2階の広間は、そういうものとして捉えられている。
また、南に寄った3階の屋根越しに冬場の太陽光をその軌道のままに取り込むという必要から2階の広間を覆う屋根に「反射板」というアイデアが付加された。取り込んだ光を室内で乱反射させようというわけなのだが、2階の広間だけではなくて3階の個室群も基本的にはこの反射板を使って採光している。この反射板をできるだけ薄くして、外郭から離して浮かせるというのも先の計画の趣旨に合わせたものだ。この反射板は2.3ミリ厚の鋼板を折り曲げてつくったコの字型断面の鋼板パネル(W=600、L=3300、t=75)で、これをボルトでつないでできる全巾11メートルの平滑面をそのまま内部仕上げとしている。この鋼板パネルには断熱材と屋根下地材も組み込まれていて、基本的にはそのまま屋根にもなっている。薄いとはいえ鉄の塊が18枚つながって宙に浮いているわけで、この矛盾したような様態は床を磨いた白い大理石にしたこととも相まってRC打放しの壁に囲まれた箱のなかにあっても奇妙な浮遊感を生むことになった。