ハニカムチューブ・アーキテクチャーの空間



私たちは、ハニカム状の構造フレームを組み上げてチューブ状の架構を形成した建築システムを開発し、その建築全般を「ハニカムチューブ・アーキテクチャー」と呼んでいる。

ハニカムチューブ・アーキテクチャー(以下HTAと記す)は、1991年に発見されたナノ構造物であるカーボンナノチューブのイメージから発想された。その六角形をチューブ状に繋げた炭素結合の自己組織化するイメージは、すべての柱が斜めになっていながら梁はひとつおきに繋がっている、高層建築のスケルトン・イメージと重なった。それは、自然を観測し空間化する、建築の歴史の一断面とみることができる。しかし同時に、人工のコンピュータがあって初めて成立する空間モデルであることも記しておかなければならない。コンピュータのシミュレーション・テクノロジーがなければ立案も解析も展開もできなかったであろう。実際、コンピュータ構造解析によりHTAの空間モデルをラーメン建築の空間モデルと比較検討して、前者の短期負荷力に対する構造的優位性を確認している。

この新しい建築空間モデルは、さらにその幾何的空間モデルに強度と素材のダイナミズムが与えられ、均質の断面形状を超えて部位に物理空間と交通する「ゆらぎ」が与えられた。その部位の「ゆらぎ」は、実にさまざまな様態を発現するため、今後も無限のバリエーションを生成する可能性を垣間見せてくれている。HTA空間モデルはラーメン空間モデルのように柱と梁とが明確に区別されている空間ではない。さらに言うと線材と面材、あるいはソリッドとヴォイドの区別すら明確ではない。つまり、空間モデルを構成する部位にあらかじめ性格付けを与えられている線形的空間ではなく、部位の性格付けをさじ加減できる非線型的空間なのだ。

HTAは、生涯にわたって住み続けられる都市居住建築をはじめ、複合機能や混合用途の建築においても、そのめまぐるしく変わる機能や用途を、長期間にわたって受け止められるサステイナブルな建築システムであろうとしている。そのために私たちは、自然エネルギーと最新テクノロジーにおいて応用できるものは集積させ、空間モデルのオルタナティブとしての深度を探究している。