大田中央コーポラティブヴィレッジ1



竣工:2006年
用途:専用住宅
主要構造:木造
規模:7住区 地上2階 地下1階
面積:7住区合計
敷地面積 718.69m²
建築面積 350.25m²
延床面積 674.57m²
敷地条件:第1種低層住居専用地域 準防火地域 第1種高度地区
構造設計:構造設計室なわけんジム(すわ製作所)
掲載雑誌:新建築2007年2月号

生活者とつくる小特区的開発手法の提案

敷地は、鉄道の駅と駅とのほぼ中間に位置する、風が吹き抜ける坂の上の立地であり、周辺では戸建て分譲住宅の開発が多数進行していた。
敷地には、昭和36年に建てられた鉄筋コンクリート造4階建てのアパートメントが在ったが、老朽化した上に建築基準法上の既存不適合建築物となっていた。そこで、新たにコーポラティブ方式で建設される、7住戸の都市型群住居として建て直されることになった。
この群住居は、「コーポラティブヴィレッジ」と呼ばれ、コーポラティブハウスやタウンハウス、戸建て住宅のメリットを合わせ持つ居住環境形式として、次の3つの主要な特性を備えている。
居住者たちは街並み協定を結んで、住居配置や外観、外構計画において一定のルールを高い意識で共有する。
コーポラティブ方式の特徴として、居住者全員が役割分担をして総会を重ねるため、居住者同士にやわらかいコミュニティ意識が生まれる。
居住者たちは、それぞれの家族のための住居をつくるだけでなく、コンパクトながら住民主体による新たな様相の街をつくり、育てる。
私たちは、上記の特性を最大限引き出すことを目指して、全体計画の基本コンセプトを立案した。その後約半年にわたり、建築家とコーディネイターとで構成されるチームの間で、手探りのようなシミュレーションと議論を重ねて独自の建築計画ルールを慎重に決定した。その建築計画ルールの基盤を形成する主な提案は以下のようである。

襞のあるアーバンポケット:新たに開発した私道と各住区間の境界線をすべて明示せずに、一体の環境としてのオープンなアーバンポケットを設け、ストライプデザイン・ランドスケープとした。その小特区的開発手法の目的は、所有空間と共用空間とが生活者たちの自由な運用によってダイナミックに交錯する場を最大化することである。
建築可能範囲の設定と外部構成材料の統一:各住区は個別設計により各生活様態の場をつくるため、襞のあるアーバンポケットの存在を担保する工夫が必要であった。そこで、独自の建築可能範囲をルール化し、階高や軒高、最高高さといった断面的な圧迫感に対する制御も行った。そして、都市型群住居としての景観や距離感とコストメリットを考慮して、外壁は構造システムにおける力壁の表現を統一し、外構仕上げ材料もすべて統一した。

プライバシーウォールとパティオ空間:各住居の一辺の壁をプライバシーウォールと称して開口制限し、隣地境界近傍に設けることをルール化した。そのことによって各住居は、対面する隣地のプライバシーウォールに対して、気兼ねなく居室を開くことができるパティオ空間を獲得できる。そのパティオ空間は、いわば隣家の外壁を拝借した「吹き抜けをもつ外の広間」である。そして、プライバシーウォールは、耐久・耐火性能が高くレスメンテナンスのレンガ壁とし、さらにその明るい色調のテクスチャーにより、太陽光のやわらかいリフレクターとしての間接採光を可能としている。