竣工 | : | 2002年 |
所在地 | : | 神奈川県藤沢市 |
用途 | : | 専用住宅 |
構造 | : | 木造 |
規模 | : | 地上2階 |
面積 | : | 敷地面積 234.4m² 延床面積 178.2m² |
敷地条件 | : | 第1種低層住居専用地域 |
家族構成 | : | 夫婦+子供2人 |
構造設計 | : | 空間工学研究所 |
プロデュース | : | ベースメント |
担当 | : | 白子秀隆 |
掲載雑誌 | : | GA Houses No.73 New HOUSE 2003年12月号 |
敷地は辻堂海岸から数百m内陸に入った住宅地の一角で、幅4mの袋小路の奥に位置している。この道路は敷地の東に面しているのだが、道路が袋小路だということと、南東の2軒の隣家が低層だということが相俟って、住宅地尾はいえ、こちら側の空間的な広がりは良好で、それは湘南のゆったりとした大らかさを感じさせるものであった。
以前からここに住んでいる施主も、やはり以前からこの道路に面してあった芝生をとても大事にしており、それを含む東から南にかけての広がりをそのまま残すことを望んでいるように思えた。
というのも、ここに住む家族は典型的な湘南家族で、そのオープンな性格と生活スタイルは、毎週末や季節毎の歳事に彼らの家をバーベキュー広場へと変貌させ、とても多くの友人知人隣人がこの家族を慕って集まってくるからで、彼らもそれを心から楽しんでいるのである。問題は敷地の中で最もポテンシャルの高い東庭が、太陽の軌道とうまく噛み合わないことで、与条件を汲み上げて住宅を立ち上げていくと、この東庭が早々と住居全体の影に入ってしまうということだった。
この住宅の存在の仕方を規定している基本的な形式は、敷地に置いた手が太陽光を掴み取りにいく形態をヒントにしている。東庭を手首、広間を手のひらとして、5本の指それぞれは、朝の白い光から夕刻の色の光まで、軌道に従ってその色を刻々と変える太陽光を捕まえる捕光装置である。
この捕光装置にそれぞれ固有の性格を与えて空間化していくのだが、このとき広間、つまり手のひらは貯光池ということになる。つまり、掴み取った光をこの貯光池に蓄えて、それを東庭に放流しようというわけである。冗談半分から出た話なのだが、東庭には近い将来、椰子の木(パームツリー)を植えることになっている。