SJR計画

この計画の趣旨は、

■すべての世代の人達が、自然と集まってくる場所を創ること。
■そこを訪れる人達が、現代の最新情報や都市の雰囲気に触れながら、同時に、その人の生そのものが常に塩尻の自然と共にあることを感じられるような場所を創ること。

の2点である。

その場所は、何らかの目的を果たすためにだけ訪れるようなものではなく、目的もなくそこに行けば、そこで何かを見つけたり、何かに（誰かに）出会ったりすることができる、「街路」のようなものだろう。
それは目的もなく歩き回ったり、風に吹かれて佇んだり、あるいは快適な気分でただ通りすぎたりするだけの、「公園」のようでもある。
またそれは、どこといって特別ではないが、日常生活の延長としての多様な行為を、人が自ら創出することを許容する包容力をもった「街」そのものかもしれない。
そしてそれは、機能性に満たされただけの施設ではなく、曖昧性を多くもち、それらが多様な空間群となって表出しているような、諸領域の集合体となるだろう。

この創出しようとする環境の核として、市民交流センターを貫いて走る、「ステージ」という空間ー「塩尻の風と大地」をそう呼び換えたものーを提案する。
この「ステージ」が、すべてのセクションを融合し、プログラムを再編制する。
「ステージ」に建築の主要構造を担わせることも期待できるだろう。

回遊する「ステージ」は館内を巡り、一階のフリースペースから屋上テラスまで、施設のあらゆる領域を貫いて連続する。人々はこの「ステージ」を巡りながら、さまざまな場所に到達し、または通過し、あるいは佇むことになるだろう。
「ステージ」からは館内のすべてのセクションを見通すことができるし、逆に館内のすべてのセクションからは、この「ステージ」と、その向こうに広がる、塩尻がもっている雄大な景観を眺めることができるだろう。
「ステージ」はまさに人々の交流と交歓の場であり、また行為の創発の場なのである。
この「ステージ」を巡りながら人々は、館の立体的構成がもつ都市性と、家並みの上に設定した架空の大地がアルプスやボッチ高原につながっていく、塩尻独自の景観がもつ地方性とを対峙・融合させ、新たな風景を創出し経験することになるだろう。

図書館は、塩尻の新しい象徴となることを意図して。最上階にもち上げられている。
ここで人々は、最新情報や古の知に触れながら塩尻の景観を眺めることができるし、また逆に、遠く外部からそういう人々の行為を見ることができる。
この図書館は、最先端の情報をリアルタイムで獲得しながらも、それが常に塩尻の自然と一体であることを認知してもらうための塩尻の新たなシンボルであり、夜間にはぼんぼりのように発光する。またこの理由から、集合住宅は市民センターの上部に計画されていない。
集合住宅は市民センターに接して、その横に計画されている。
しかしこうすることで、市民センターと集合住宅の接触面が長くなり、集合住宅の多様な使い方に対して、市民センターの全体計画がもつ可能性の幅を拡げている。
多目的ホールは、レザンホールとはまったく趣を異にする全面ガラス壁のホールである。
塩尻の風景と一体となった、独自の且つ多様な使い方が可能だ。
ホール未使用時に解放しておけば、塩尻の自然と向き合いながら休憩する場にも、一人だけで塾考する場にもなるだろう。
すべては常に、塩尻の自然とともにあるのである。