KAH計画



1:環境全体を獲得するために敷地は豊かな自然に恵まれた独自の風景を持ったところです。全体計画の目論見は、ここを訪れる人々に、この地がどのような場所であるのかを、雄大な山々から一枚の葉っぱの形やその匂い・感触に至まで、広い範囲にわたって創造的に認識してもらい、環境全体を獲得してもらうことにあります。そのために、ここではこの敷地が本来もっていた風景とはまったく違う風景を重ね合わせていくという方法を採りながら、それぞれの風景を自立・対峙させてお互いを際立たせ、その中からこの地の持つ豊かな環境をあぶりだすことにより、一元的なものに陥ることのない新たな場所を創造しようとしました。それぞれの風景は、多様な関係を取り結びながら、豊かな環境全体を、雄大な無垢の自然と一緒に、人々に開示することになるでしょう。
1-a:建築建築本体は、大自然の持つ滑らかな曲線とは対照的に、厳格で単純な幾何学的ヴォリュームによって構成しています。
1-b:デッキ木製の細長い歩行デッキを、建築本体からまっすぐ、屋外展示ゾーン・樹林展示ゾーンを抜けてイヴェント・交流ゾーンの末端まで、「彫刻ふれあいの森」全域を突き抜けて一直線に通しています。このデッキは、建築本体をも貫通して駐車場ゾーン側にある屋外展示広場にまで達します。これは一種のランドアートであり、独自の風景を創り上げます。このデッキに周遊園路や彫刻作品が創り出す風景が重なり織上げられ、さらにこのデッキを糸口にして園内の便益施設が重ねられることによって、多様な風景を創り出すことになります。
1-c:池この敷地には、数々の大自然の要素は無垢のまま何でも揃っていますが、ただひとつ、水だけがありません。ここでは、建築と一体となった池を計画しました。この池は空と風の象徴でもあり、樹林と対峙し、人々に木を木として認識させることになるでしょう。この池は、濾過循環によって常に清い水面を保っており、周囲の自然や作品、そして建築本体を映し出すことになります。