MT計画



A)はじめにここに提案されている建築は、メディアテクノロジーの実験所(ラボ)である。ただし、メカニカルな情報宮殿を意図しているわけではない。むしろ、祝祭的な場所を創出・提供することによって、人間と自然と情報が出会い交流するような、柔らかいシステムを持った建築を体現しようとしている。したがってここに在るのは、各機能が整然と並んだ機械のような均質体ではなく、生物のように複雑で多様な、不連続な非線型連続体としての建築である。
B)都市的文脈計画地において明確に認知できる都市的文脈は、定禅寺通りのけやき並木と、通りの巨大なスケールである。計画案はその都市との繋がりを、杜の都・仙台を象徴するけやき並木との連続に賭けている。新たに計画された並木は、既存並木と直交し建築を縦断する。定禅寺通り側のファサドは、意図的に大きなスケールで対応し、敷地周辺との間にダイナミックな関係を取結びつつ、建築の強度を確保しようとしている。
C)建築構成この建築は以下の3つの部分から構成される。
1.メディアフォーラム(都市広場)……都市の連続体としてのメディアランドスケープ
2.インターフェース………情報源へのパーソナルで積極的なアクセス領域
3.データベース………高密度な情報集積体
C-1:メディアフォーラム定禅寺通りに向けて全面的に開放された屋内広場としてのフォーラムと、けやき並木が進入する屋外広場としてのプラザよりなる。ここに展開される各機能要素は、曖昧に領域分けされているだけで、意図的に混在・錯綜され、衝突を起こすように仕向けられている。この空間は、不連続・不規則に発生する雑他な諸活動を許容し、むしろそれを誘発し増幅する、非線型で流動的な液晶状の空間である。各機能諸室は単一の機能だけでなく、それ以上の複合性を包含させることができるよう考慮されているが、ここでは各諸室間の視覚的・運動的な関係性こそが重要視されている。メディアホールとフォーラム・プラザを仕切る壁は、大きく開けることが可能であり、この時、ホールと都市は一体となる。そしてガラス張りの視聴覚集会室はホールの観客席ともなり、またステージともなるであろう。
C-2:インターフェース人とアートメディア・ペーパーメディアとの積極的な接触空間である。世界中の美術・図書情報を、各個人が端末装置で直接呼出・出力が可能となることが極めて近い将来確実になっている今日、建築を訪れる人の目的は、従来までそうであったように、その建築が持つ機能と直線的に結び付くものではないであろう。図書館に付属している空中庭園としての中庭は、この状況に対する一つの提案である。人はその中庭に佇みたくて図書館に行くのである。そしてついでに本を読む。
C-3:データベース情報の高密度なストック空間である。情報はここからメディアコラムによって下階の端末装置まで送られる。