KK計画



敷地は南北に細長く西に自然林を背負った平坦地であり、明らかに東の修景池側に正面を向け構えている。しかし敷地から修景池方向を眺めたとき、駐車場やレストラン・既存民家などが極めて近距離に位置しており、建築をこちらに向けて開くことは、敷地と建築がシンクロして創り上げる場の強度を弱体化させ、多様な世界を展開させる可能性を失くしてしまうだろうと判断した。この計画では、二重の壁をほぼ一直線に走らせ、壁の西側(自然林側)に建築本体を据えて修景池側に対していったん閉じ、自然林方向に向けて開くという構成をとった。そして壁と建築本体との間に、小町も愛でたであろう日本の四季をテーマとした四つの庭とひとつの光庭をつくり、この庭を巡るプロムナード状の動線を設定、これに貫かれるように諸室を配した。一方外部においても、人が建築に纒わりつくような動線を設定し、縁や月見台・あづまやを修景池や蛍の川と絡ませた。こうして、外部にあっては自然風景のなかに溶け込みながらも、内部にあっては独自の風景を内包し、結果的に内外を通じて多様な世界が展開する建築を創り出そうとしている。主要機能である資料室(展示―静)と研修室(集会―動)は、性格がまったく異なるため、エントランスホールを挟んで左右に振り分けて配した。資料室は小野小町辞世の句に掛けて、二重の壁の内側にさらに壁で囲んだ三重の壁のなかに、倉状の形態を与えて配した。屋根を突き抜けていくこの形態に、「小町の舎」としての象徴性を託すと同時に、建築がそこに建つことの同一性を示そうとしている。資料室を囲う壁の外面は企画用の展示壁面に供され、ここをギャラリーとして使用できるようにした。学習室は図書室を基本とするが、AV展示に対応できるよう考慮されており、資料室との一体利用の可能性を与えた。